出版物の詳細情報
衛星航法(GPS/GNSS)関連
2021年(令和3年)
坂井・北村, 測位航法学会論文誌,Vol.12, No.1, pp.1-7,2021年12月
衛星航法システムに対する補強情報を送信する補強システムとして, 静止衛星を使用するSBAS(Satellite-Based Augmentation System)が 標準規格となっている. SBASの信号はGPSと同一の形式であり, GPSと同様に測位衛星として利用できる. 日本のSBASであるMSASは過去にこのために必要なメッセージを送信して 測距機能を提供していた時期があるが, 現在は提供していない. 一方,MSASの静止衛星は2020年4月に更新されており, 信号生成方式が変更されていることから, 測距機能の提供を再開した場合にはその性能に変化があるものと思われる. 静止衛星の更新前後のMSASについて測距精度を評価したところ, 現行のMSASでは以前よりも改善されており,GPSと同等であることがわかった.
2019年(平成31年=令和1年)
三宅・坂井・麻生, 電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会, 信学技報,vol.118,no.441,SANE2018-111,pp.7-12,2019年2月
衛星航法システムGNSSの観測ネットワークとしては, 日本においては国土地理院が運用しているGEONETを利用できる. 準天頂衛星システムのCLASサービスも基準点として利用するなど各種GNSSアプリケーションのGEONETに対する依存度は高まってきているが, その稼働状況に関する報告例はない. 当所では,GEONETのメンテナンス情報等を利用して各基準点及びGEONET全体の運用状況を調査したので,その結果を報告する. 保守作業の予告ベースでは,11ヶ月間の調査期間中の全点平均の稼働率は98.8%,またMTBFは26.7日程度であった.
2018年(平成30年)
坂井, 電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会, SANE2018-33,2018年2月
GPSはいまや社会インフラともいえるほど広く利用されており, 交通システムにおける利用も進められている. ただし,GPSは人工衛星からの電波を使用するので, 他システムからの電波干渉や意図的な妨害により利用不能となることがあることに注意が必要である. さらに,GPSの信号を記録・再生することによる攻撃や, GPSと同一の信号を生成することでGPS受信機に誤った位置を出力させることも考えられている. 本報告は,こうしたGPSにおけるセキュリティの問題について述べるとともに, 現在考えられている対策を紹介する.
坂井,測位航法学会論文誌, Vol.9, No.1, pp.1-6,2018年3月
現在規格化作業が行われている 次世代SBAS(Satellite-Based Augmentation System)では, SBAS信号を送信する衛星について 静止衛星のみならず準天頂衛星を含む非静止衛星も許容される見込みである. ところが, 規格案中のSBAS衛星エフェメリスに含まれるクロック補正パラメータについては 非静止衛星について十分に考慮されておらず, 定義域が不足することがわかった. この点を改善するために, クロック補正パラメータについてビット数を増やす一方で 他のパラメータのビット数を削減するよう エフェメリスメッセージの見直しを行ったので, その結果を報告する.
三宅・坂井・麻生, 電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会, 信学技報,vol.117,no.445,SANE2017-110,pp.7-12,2018年2月
GPSにより航行する航空機については, 経路上及び到着空港におけるGPSの利用の可否を あらかじめ予測することが要求されており, 必要に応じて経路の変更等が行われている. この予測の精度は GPSにより航行する航空機の運航計画に影響する一要素といえることから, 予測精度の向上に資することを目的として GPS衛星の故障及びメンテナンスの傾向の分析を試みた. 最近の衛星では保守及び障害のいずれも頻度が低下していること, 保守作業が予定時間内に終了しない例はみられないことなどがわかった.
2015年(平成27年)
坂井・麻生,測位航法学会論文誌, Vol.6, No.2, pp.7-11,2015年3月
GPS補強システムの一つSBAS(静止衛星型衛星航法補強システム)は 現状ではL1周波数のみを使用するものとして規格化されているが, これにL5周波数を加えて二周波数システムとするための新規格が検討されている. L5周波数に重畳されるメッセージの伝送速度は現行規格と変わらない見込みであるが, メッセージの先頭に付されるプリアンブルについて 8ビットから4ビットに短縮する提案がある. プリアンブルはSBAS受信機の初期捕捉で用いられるものであり, 短縮に当たっては性能面における影響を検討する必要がある. 本論文では, プリアンブルの短縮による初期捕捉性能への影響を検討した結果を報告する.
2012年(平成24年)
坂井,測位航法学会論文誌, Vol.3, No.2, pp.9-14,2012年11月
GPS補強システムの一つSBAS(静止衛星型衛星航法補強システム)は 航空分野向けに制定された規格であるが, 非航空分野における利用が妨げられているわけではない. 非航空分野においては 広域ディファレンシャル補正情報以外にもさまざまな情報が有用であり, このために静止衛星から放送されるSBAS信号は有効な情報伝達手段といえる. ただし, SBAS規格で定められているメッセージにより送信できる情報は 種類及び内容が限られていることから, 応用によっては規格外のメッセージが必要となる場合がある. 本論文では, 航空用SBAS対応受信機に対する安全を確保しながら, 規格外のメッセージを放送する方法について述べる. 未定義のメッセージタイプを使用するほか, CRCパリティの生成多項式を変更する手法について詳細に検討した.
2011年(平成23年)
坂井,測位航法学会論文誌, Vol. 2,No. 2,pp. 13-20,2011年9月
GPSをはじめとする衛星航法システムでは, 受信機の現在位置のほかに現在時刻及び日付を得ることができる. 特に時刻については高い精度で知ることができ, すでにネットワーク基地局間の時刻同期などに広く利用されている. ところで, GPSの航法メッセージにおける現在時刻の表現は有限の情報量しかなく, 週番号の取扱いにおいて約20年の周期の不確定性をもつことが知られている. 本論文は, 週番号の不確定性を決定する方法を述べるとともに, 潜在的な不具合要因となり得るGPSの時刻表現における問題について整理した.
2008年(平成20年)
坂井,福島,工藤,藤井, 電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会, SANE2008-91,2008年12月
我が国においては, 衛星航法システム(GNSS)を利用可能な RNAV(広域航法)航行及び進入方式が設定され, また 広域補強システムMSASも運用を開始するなど, GNSSを利用できる環境が整えられつつある. 一方, GNSS受信機の規格は多岐にわたっており, それぞれが別々に機能や性能を規定している状況である. GNSSにはいくつかの方式があるが, それぞれの機能や性能について 誤解されている例も見受けられることから, 現在までに制定されている 規格類の整理及び内容の把握を試み, あわせて 航空機の運航に対する効果についても検討した.
坂井,武市,福島,工藤,藤井,山本,行木,宮津,福田, 電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会, SANE2008-42,2008年7月
航空機の航法には衛星航法システム(GNSS)の導入が進められているが, 特に進入着陸フェーズにおいては 垂直誘導を伴う精密進入を可能とする 誘導システムの研究開発が行われている. GNSSを導入した場合のメリットの一つとして, 小規模空港への精密進入方式の設定による 欠航やダイバートの減少が考えられるが, 定量的に評価した例はない. 現実にどの程度の効果があるかを知るため, 空港気象情報に基づいて定量的評価を試みた例を報告する.
坂井, 電子情報通信学会論文誌, Vol.J91-B,No.4,pp.479-486,2008年4月
GPS受信機の電源投入後に 最初の位置情報が出力されるまでの時間を意味する 初期位置算出時間(TTFF)は, GPS信号を捕捉するまでの時間と, 航法メッセージの受信に要する時間により決まる. 前者については各種の高速化手法が提案されてきているが, 後者を短縮する手法については 別途の高速回線で伝送する以外には検討例がない. GPSの応用の拡大に伴い TTFFの短縮がひとつの課題となっていることから, 低速回線のみにより, 所要の軌道情報を取得するまでの時間を 短縮する方法を検討した. 静止衛星を用いる広域補強システムSBASが実用化されつつあることから, SBASに応用可能な手法を提案する. 本手法は, 我が国が開発を進めている 準天頂衛星(QZSS)補強信号(L1-SAIF)にも応用可能である.
2007年(平成19年)
坂井,東京電機大学出版局,ISBN978-4-501-32550-3,2007年1月
C言語によるサンプルコードを提示して、 GPSにおける測位計算手順の具体的な解説を試みた。 GPS観測データを保存するファイル形式として一般的な RINEXを読み込む関数も含めてあり、 インターネット上に公開されているRINEXファイルを利用して 測位計算を体験できるように配慮した。 測位計算の基本から、 衛星の仰角に応じた重み付け、 ディファレンシャル補正の方法までを網羅。
※書籍に掲載したプログラムを公開しています。ソースプログラム
※C++版プログラムを作成していただいた方がいます。ありがとうございます。Fenrir's BLog
坂井・福島・武市・荒蒔・伊藤, 電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会, SANE2006-132,2007年1月
米国が運用するGPSの民間用信号は 開発開始以来L1 C/Aのみとされてきたが, 最近の近代化計画の一環として, 1999年1月に 第二民間周波数(L2C)の導入が発表された. これは 軍用信号のみを放送していた L2周波数(1227.6MHz)に 民間用信号を追加するもので, 2005年から打ち上げられている ブロックIIR-M衛星で実際に追加されている. L2C信号の放送もすでに開始されており, 対応受信機があれば 受信・利用することが可能となっている. このL2C信号について 基本的な特性を知るため, 受信試験を行った結果を報告する.
2006年(平成18年)
坂井・福島・新井・伊藤, 電子情報通信学会論文誌, Vol.J89-B,No.7,pp.1297-1306,2006年7月
日本全国規模の広い範囲にわたって ユーザ測位精度の向上を図る GPS広域補強システムとしては, 我が国では運輸多目的衛星(ひまわり6号)を用いるMSASが構築されつつあり, また最近は準天頂衛星システム(QZSS)による方式も 開発が進められている. いずれも GPS L1信号と同一の周波数にて 広域補強情報を放送するものであって, ユーザ受信機ハードウェアの負担を抑えながら 測位性能を改善することができる. 本論文では, GPS広域補強システムにおける 補強情報の具体的な内容及びその生成方法について述べる. また, 日本付近で稼動する広域補強システムについて 現実に期待できる性能を知るために, 実際に補強メッセージを生成するプロトタイプシステムを実装し, ユーザ受信機シミュレータとあわせて測位性能を評価したので, その結果を報告する. 評価結果より, 毎秒250ビット程度の情報量があれば サブメータ級の測位精度が達成可能であるとの見通しを得た.
坂井・福島・新井・伊藤, 電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会, SANE2005-93,pp. 31-36,2006年1月
衛星航法システムGPSの性能を 大陸規模の広い範囲にわたって 向上させる広域補強システムとしては 米国のWAASや我が国によるMSASの実用化が進められ, また現在我が国が開発中の 準天頂衛星システム(QZSS)が放送予定の サブメータ級補強信号(L1-SAIF)においても 同様の広域補強機能を持つこととされている. 広域補強システムは 一般にベクトル補正を採用しており, 各種誤差要因のそれぞれについて 個別にディファレンシャル補正情報を生成・放送するが, これらは実は GPS衛星の精密軌道暦や電離層全電子数(TEC)データベースと 本質的に同一の物理量であることから, 相互に比較・評価できるはずである. 今回は, MSASの試験信号および 当所が開発した広域補強プロトタイプシステムによる補強情報を対象として 広域補強情報の品質評価を試みたので, その概要を報告する.
2005年(平成17年)
坂井, 電子情報通信学会論文誌, Vol.J88-B,No.12,pp.2382-2389,2005年12月
電離層遅延は衛星航法システムの主要な誤差要因であるが, 逆に位置があらかじめわかっている受信機を利用すれば 電離層の観測が可能となる. 最近は 国内外のGPS観測ネットワークが整備されていることから GPSは電離層観測の有力な一手段となってきており, レーダ等による観測に対して 電離層全電子数の空間的・時間的分布を知ることができる特徴がある. 二周波GPS受信機による電離層観測では 観測データに含まれる周波数間バイアスを推定・除去する必要があるが, 本論文はこのための手法について述べる. バイアス推定処理で用いる 電離層モデルの比較も試みたところ, 2層以上の電離層を仮定するモデルが有効であることがわかった.
2004年(平成16年)
坂井他,電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会, SANE2003-97,pp. 25-30,2004年1月
現行のICAO SBASにおける 電離層遅延補正方式では, 経緯度で5度毎の 格子点における垂直遅延量が放送され, ユーザ受信機は自分の位置における遅延量を 内挿により求めて補正することとされている. この方式は 主に北米大陸における電離層観測データに基づいて考えられたものであるが, この地域の磁気緯度は中程度であって, 電離層活動はそれほど激しくない. したがって, 低磁気緯度地方でのSBASの利用にあたっては, 現行のSBAS方式により 所要の電離層遅延補正を行えるかどうか十分な検討を要するところである. このため, 現行SBASの補正能力について 日本付近における 電離層遅延観測データを用いて検討した結果, 電離層活動が活発でない場合には比較的良好な補正を得られるが, 磁気嵐発生時には 補正しきれない大きな残差を生じる可能性があることなどがわかった.
2003年(平成15年)
坂井他,電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会, SANE2003-87,pp. 13-18,2003年12月
電離層遅延は衛星航法システムの主要な誤差要因であるが, 逆に位置があらかじめわかっている受信機を利用すれば 電離層の観測が可能となる. 最近は 国内外のGPS観測ネットワークが整備されていることから GPSは電離層観測の有力な一手段となってきており, レーダ等による観測に対して 電離層総電子数の空間的・時間的分布を知ることができる特徴がある. 2周波GPS受信機による電離層観測では 観測データに含まれる周波数間バイアスを推定・除去する必要があるが, 本報告はこのための手法について述べる. バイアス推定処理で用いる 電離層モデルの比較も試みたところ, 2層以上の電離層を仮定するモデルが有効であることがわかった.
坂井,東京電機大学出版局,ISBN4-501-32260-8,2003年2月
「GPSについては, 単にユーザセグメントとしての利用方法を語る ノウハウ書は今までも多かったのですが, スペースセグメント等を含む, GPSの工学的な側面の導入教育に使えるものは, 日本語としては存在しなかったように思います. 本書は,使うべきところには(天下りにせよ)数式を掲げ, 数式からGPSの諸性質を導出している点と, 200頁程度の紙数で要領良く技術的なポイントを網羅している点で, 非常に好感が持てます. 『GPSって何だろう?』と興味を持つ, あらゆる分野のエンジニアにおすすめです.」 (Amazon.co.jp書評より).
2002年(平成14年)
坂井・惟村・新美, 電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会, SANE2002-33,pp. 7-12,2002年7月
航空機の航法システムとして, GPS(global positioning system; 全地球的測位システム)を利用する 衛星航法システム GNSS(global navigation satellite system; 全世界的航法衛星システム)が 構築されつつある. GNSSの実用にあたっては十分な信頼性を確保する必要があるが, このために機上に搭載されているGNSS以外のセンサを利用することは有効である. 高度方向については気圧高度計が使用可能であることから, 著者らは気圧高度によるGPSの補強について検討した. 気圧高度計は大気環境の変動により指示誤差を生じるため こうした影響を補正する方式を検討し, 我が国における気象観測データから 実際に予想される指示誤差を見積もった. さらに飛行実験により補正効果を確認した結果を報告する. 本報告は, 気圧高度計によるGNSS補強方式の開発のための基礎資料となる.
準天頂衛星システム(QZSS)関連
2010年(平成22年)
坂井,福島,伊藤,工藤, 電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会, SANE2010-32,2010年6月
準天頂衛星は 今夏の打上げを目指して 最終の準備作業が行われているところであるが, 一方, 我が国においては, 航空機の航法に利用可能な衛星航法システムとして, MSASと呼ばれるシステムを航空局が運用している. これら両システムは異なる経緯・仕様のもとで開発されてきたが, 共通点も多い. 高価な衛星を 個別のシステムごとに打ち上げるのは効率的とはいえないことから, 単一の衛星により 両システムの機能を実現する可能性について検討した. 主要な結論としては, 次の二点の制約があることがわかった:\ (i) 航空用衛星航法システムの現行規格では 準天頂衛星の測距機能を利用できない, (ii) 現行設計の準天頂衛星では TTA(警報時間)が大きく 精密進入サービスは実施できない.
2008年(平成20年)
坂井・福島・武市・伊藤, 電子情報通信学会論文誌, Vol.J91-B,No.3,pp.309-316,2008年3月
現在我が国が開発中の準天頂衛星システム(QZSS)は, サブメータ級の補強情報を GPS L1信号と同一の周波数にて放送することとしている(L1-SAIF信号). このサブメータ級補強機能は 広域ディファレンシャル補正方式により ユーザ測位精度の向上を図るものであるが, L1-SAIF信号自体も測距信号として利用することができる. ただし, そのためには準天頂衛星の軌道情報(エフェメリス情報)を 放送する必要があることから, そのメッセージ形式を検討・設計した. 直交座標値を直接伝送する方式により, 1メッセージにて所要の精度の軌道情報を放送可能との見通しを得た.