SAが解除された時刻の観測結果

福島荘之介,齊藤真二(運輸省電子航法研究所)

2000年5月12日

1. はじめに

2000年5月1日のEDT(米国東部夏時間)0時(日本時間5月2日13時)頃に 米国大統領声明 によりSA(Selective Availability)が解除されました. 解除の時刻については,当初 IGEB(Interagency GPS Executive Board) からGMT0時と不正確な発表があった経緯もあり,定期観測しているサイト以外は解除されたときのデータを測定するのが難しかったかと思われます.

筆者は,当日GPS-USERメーリングリストにより,その情報を得て,手元にあった受信機を動作させたところ,偶然 SA解除の時刻の観測データ(1秒毎) を得ることができました.

以下は,そのデータの処理の結果です. SAが解除されたときの様子およびその時刻がわかりましたので紹介します.

2.測定条件

  1. 観測時刻:11:27〜14:34(JST)
  2. 受信機:Trimble 4000SSi
  3. アンテナ:AeroSpaceTechnology type2775
  4. データ測定間隔:1秒
  5. マスク角:0度
  6. 観測場所: VORアンテナ試験塔カウンターポイズ上 (運輸省電子航法研究所,三鷹市新川6-38-1)
  7. アンテナ位置:35.68006584, 139.56102773, 110.665(WGS84)

3.データ処理の方法

  1. トリンブルDATファイルをRINEXフォーマットに変換(dat2rin.exe)
  2. 観測データ中のC/Aコード擬似距離(C1)と衛星位置から最小2乗法(重みなし)による測位計算
  3. このとき,電離層遅延(放送モデル),大気圏遅延(Saastamoinenモデル),相対論効果を考慮する

4.結果

  1. 図1にSA解除時の測位誤差の時間変化を示します. EDT0時(=GPS週秒187187)付近で,測位誤差が瞬時に数m程度になるのが,はっきりわかります.SAの解除前に上下方向の測位誤差が500m以上と通常より大きいのは,このときマスク角15度以上の可視衛星数が4個と少なかったためです.また,SAが解除された時刻は,EDT0時から少しずれているようです.

  2. そこで,SAが解除された瞬間を時間的に拡大したのが図2です(マスク角0度で計算した結果).可視衛星数が変化する時刻では,測位誤差のジャンプも見られますが,SAが解除され,測位誤差が安定するのは,GPS週秒187600(EDT00:06:27)付近であることがわかります.

  3. 図3では,さらに可視衛星ごとに擬似距離の残差を計算した結果を示します.
    擬似距離の残差=擬似距離−RNG−CLK−DLY
    と計算しました.
    ここで,RNG,CLK,DLYは,
    RNG:衛星位置と受信アンテナ位置の距離
    CLK:測位演算した結果求まる受信機のクロックオフセットの距離換算量
    DLY:電離層遅延,大気圏遅延,相対論効果による遅延の総量
    です.
    全ての可視衛星の擬似距離残差がGPS週秒187600付近で同時に小さくなるのが確認できます.

5.その他

この他,SA解除の観測結果は, IGEBでも公表されています.

6.謝辞

GPS-USREメーリングリストに最初にこの情報を投稿していただいた河口 星也 さん(DXアンテナ株式会社 GPS事業部),データをGPSurveyで解析され,助言をいただいた 宮野 智行さん(宇宙開発事業団 筑波宇宙センター),EDT時刻についてリプライいただいたYuzuru Goto さんおよび坂井研究官(運輸省電子航法研究所)に感謝致します.

7.問い合わせ

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