東京国際空港において滑走路異物監視システム評価装置を用いた試験を実施しました

令和5年7月12日

国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 電子航法研究所(所長:島津達行)は2023年(令和5年)5月中旬から6月下旬までの間、東京国際空港に設置している滑走路異物監視システム評価装置を用いて性能評価試験を実施しました。

東京国際空港C滑走路における試験状況
東京国際空港C滑走路における試験状況

滑走路異物(Foreign Object Debris: FOD)監視システムとは、空港滑走路上の異物を自動的に検知し、その画像や位置情報を空港運用者に提供する新しい監視システムで、世界的に開発が行われています。当所がメーカーと共同で開発したFOD監視システム評価装置は、ミリ波レーダセンサと高精細カメラを用いており、これまでに行った実証実験を通じて世界トップレベルの検知性能を有することが確認されています。

FOD監視システムにより、FODに起因する事故を未然に防ぐだけではなく、滑走路点検の回数低減や時間短縮を図ることが期待されています。また、滑走路の利用効率の向上及び滑走路閉鎖による航空機上空待機時間の低減が可能となると考えられ、CO2排出量の削減にも寄与すると期待されています。

当所が東京国際空港C滑走路脇に設置したFOD監視システム評価装置は、FOD監視システムの国際技術基準(EUROCAE MASPS ED-235)を満たすよう開発されており、主な特徴は90 GHz帯のミリ波レーダセンサで滑走路上のFODの有無を常時監視し、FODを探知した時は高精細カメラでその画像を正確に取得することにあります。ミリ波レーダを用いることでライダ等の光学センサよりも高い耐候性を有します。また、90 GHz帯で最大8 GHz帯域幅の広帯域信号幅を用いることで、70 GHz帯を利用するレーダセンサに比較し、高分解能特性及び高滑走路面クラッタ抑圧効果を有しています。

FOD監視システム評価装置の外観
FOD監視システム評価装置の外観
FOD監視システム評価装置の遠隔表示例
FOD監視システム評価装置の遠隔表示例

今回実施した性能評価試験では、国際技術基準の主要項目であるFOD探知率(6種類の評価対象物についてそれぞれ100回以上の測定を行い95 %以上(晴天時)探知)、位置精度(誤差5 m以内)、探知時間(4分以内)、分離性能及び同時探知性能(10 m離隔した3個のFODの分離及び同時探知)について評価を行い、これらの国際技術基準の主要項目のすべてに適合することを確認しました。(注:括弧内は国際技術基準要求値)

さらに、国際技術基準上の6種類の評価対象物(コンクリート片、灯火、M10ボルト及びナット、タイヤ片、金属片、燃料キャップ)の各片寸法を半分に縮小した物体に対しても性能評価試験を実施し、FOD探知率が全て95%を超えることが明らかになりました。また、探知率測定では各対象物について100回以上の異なる条件での測定を滑走路上5箇所で実施する等、様々なFOD落下条件を想定した評価を実施しました。位置精度及び探知時間についても、それぞれ1.4 m以内及び50秒以内となり、国際技術基準の要求値よりも大幅に低減した性能を示しました。

当所では、引き続き、日本の空港環境に適したFOD監視システムの実用化に向けて取り組んで参ります。

滑走路上に配置した基準対象物の概観
滑走路上に配置した基準対象物の概観
(左からタイヤ片、灯火、M10ボルト+ナット、燃料キャップ、コンクリート片、金属片)

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